Designからアプローチするリーダーシップ<1>_XDesignAcademy
XDesign Academy2020 年リーダーコースで学ぶ
兼ねてから注目していたX Design Academyにて学ぶ機会を頂き、本日から学びがスタートしました。期待されるリーダーシップについて見識を深め、教育の場における導入方法について検討していきたいと考えています。
2020年新型コロナウィルスの影響は不透明で、日常生活や仕事においても日々変化に対応することの重要性を痛感します。
デザインからアプローチするリーダーシップ
冒頭では山崎和彦先生からコース概要と学びのポイントについてお話がありました。その中で「高度デザイン人材育成ガイドライン」について紹介があり、デザインをベースとしてリーダーシップが発揮でき、ビジネスをリードする人材の必要性が紹介されました。
↑高度デザイン人材育成ガイドラインから抜粋。
リーダーシップの役割の変化と共に、チームビルディングの重要性が増している中で、チームビルディングで大切な視点と、チームの改革に必要な糸口を得るための手法を体験できました。
チームビルディング「互いを知る」
本日の講師は坂田一倫さん。「チームのメンバーを知ることで、バリューを発揮することができる」ため、まずは、メンバーのお互いを知るためのワークを体験しました。
お互いを知るためにインタビューをするのですが、インタビュー前に自分で「仮説」を書き出してみることで、インタビューの設計ができることが理解できました。とてもいい方法なので、活用してみたいです。
今回のワークでは質問の順番が不適切だったな〜というのが反省点。質問を作ったら、どんな順番で質問すれば相手が答えやすいのかも考えておくと良いと思いました。
チームの改革に必要な糸口を得るための手法
そして、今回の学びの中でも重要なワークとして、「チームのヘルスチェック」を体験しました。
変化に対応できる強いチームを作るためには、チームの今の健康状態を知ることが重要で、このヘルスチェックを通じて改革の糸口となる「フィードバック」につなげることの重要性を体験できました。
宿題「ヘルスチェック」をやってみよう!
次回までの宿題として、各自のチームで「ヘルスチェック」をしてみよう!ということになりました。職場の「教員メンバー」でやるか「クラスメンバー」でやるか悩みましたが、今回は目下の成功させたいプロジェクトが動いている「クラスメンバー」でやってみることにしました。
準備としては、「オンライン授業で示すスライド」「メンバーのレスポンス方法の検討」です。「赤・黄・緑」のマークについては、自宅にある3色のグッズを手元に用意してもらい、カメラにかざしてもらいながら実施しました。
↑用意したスライド(質問内容をアレンジしています)
実際にやってみたところ、
1)ファシリテーションの難しさを感じたものの
2)メンバーの多様な想いが共有され
これまで、プロジェクトが「リーダー」→「メンバー」の一方向だったものから、双方向へ変化しはじめた気配を感じることができました。
メンバーが「プロジェクト」を自分ごと化するきっかけ作りができたことが効果でした。今後は行動につながるフィードバックを刺激し、行動が変化してくるよう働きかけることが大切だと感じています。
まとめ
リーダーシップがテーマの講座ですが、ビジョンのデザイン、ワークショップの企画、デザイン経営など注目されるキーワードを広く学べるので、次回以降も楽しみです。
メンバーの皆さんもモチベーションが高く、様々な職場でリーダーシップを発揮している方々なので交流も楽しみです。
議論を可視化する「がようしマップ」
アイデアの可視化を支援する
大阪で開催された第65回日本デザイン学会にて研究発表を行いました。
タイトルは「紙立体を活用した触知によるアイデア生成手法」
デザイン思考をベースにデザインプロセスを進める中で、アイデアが具現化されにくいという問題点を感じたことをきっかけに始めた、紙立体を活用した発想支援。今回は取り組みの中間発表として会場の方々からご意見をいただくのを目的に参加した。
発表の中核となる「がようしマップ」を検討する背景には2つの課題があった。
多様性と共通言語
まず1つめの課題は、異なる専門性の学生たちによる共創チームで「共通言語」が必要になったことだ。複合学科の学生メンバーで共創プロジェクトを実施した際に、それぞれが同じゴールに向かっているにもかかわらず、プログラミング、電子回路設計、UI、サーバープログラミングなど専門的な言語によってコミュニケーションを行うため、理解が進まず、議論が深まっていきにくいという問題点があった。そこで、プロジェクト2年目からデザイン思考を開発プロセスに導入した。
早い段階でビジョン(コンセプトとユーザーの利用文脈)を触知可能な状態で共有する
2つ目の課題は、
デザイン思考をベースとしたプロセスで製品の具体的なイメージが固まるまで長い時間を要したことがある。共創デザインの経験値の低い学生たちが、それぞれのアイデアを出し合い1つの意見にまとめあげていくまでは様々な課題があった。
・意見を発案する自信がない。
・複数のアイデアが発案された場合にアイデアの選択ができない。
・文字やスケッチによる検討が長く続き、具体的なイメージが持てない。
コンセプトが固まってきた段階で、触知可能な状態でユーザーの利用文脈を理解し、コンセプトを全員が参加した状態で確認する課題があった。
ものをつくることで考える
コンセプトがだいたい見えてきた段階で、手を動かしながら「ものをつくることで考える」方法を検討した。
構築主義(Constracrionizm)
ものを作る(構築する)ことで、頭の中に新しい知識を構築することができる。 シーモア・パパート
教育理論の1つに「構築主義」という考え方があり、「マニュアルに沿って何かを組み立てても、本人の知識や感情と結びつく経験にはならず、そこに学びは起きないと考えていた。ものを作ることで学ぶ学習体験が重要だという考え方だ。ピアジェの「知識は経験を通して構成されるもの」という考え方に深く影響を受けた、パパート教授がさらに推し進めて「ものを作る(構築する)ことで、頭の中に新しい知識を構築することができる」とした。
手を動かしながらものをつくることでイメージを構築していこうという考え方をベースとしたのが「がようしマップ」である。
↑がようしマップの事例
がようしマップとは
がようしマップの活用シーンはいろいろ可能性がありそうだが、つくる手順は概ね以下の3つのステップである。
1.アイデアをプロットする
これから作ろうとしている製品や議論のテーマに関係する人物や建物、シーンなどに必要となる要素をプロットする。
2.関係性や時間を表現する
それらの要素を置いたり、並べたりするとそこに関係性や時間が表現される。
3.ストーリーを描く
がようしを立体的に活用して、実際にキャストやオブジェクトを動かしながら確認することで製品の利用シナリオがイメージできてくる。
また、アイデアを画用紙という手で触れるオブジェクトに置き換えることで、だれもが手で触り自由に移動したり組み合わせたりすることが可能になった。このことによって、メンバーのアイデアが全員に共有されやすくなった。
これらを整理すると、以下のようにも捉えることができそうだ。
がようしマップはだれが発案したのか
がようしマップは株式会社マルマンの協力により、画用紙を活用したワークショップの実験を行う「がようしラボ」がプラットフォームになっている。メンバーは、ワークショップデザイナーの横須賀ヨシユキと、「デザイン教育、発想支援手法」を研究テーマとする井上順子が中心である。画用紙を用いた「共創」「プロトタイピング」の可能性に焦点をあてたアイデア生成手法の共同開発を進めている。
がようしマップの特徴
がようしマップは他のアイデア可視化手法と比べると「直感的」に作成することができること、結果として「ストーリー」が描けることが特徴だ。
がようしだから安心してアイデアを表現できる
だれもが小学校などで触ったことがある素材「画用紙」だからこそ、懐かしく、安心して手がだせる表現の土台となっている。
安心して使える素材という点は、「自由に」アイデアを誘発する懐の広さを持っている。
触知_言葉以外の五感を用いた創発に期待
画用紙によって作られた立体オブジェクトは手で触ることができる。手で触り動かし、直感的に試しながら考える作業ができる。
視覚のみならず、触知による刺激が脳に伝わりアイデアを刺激し、楽しく発想が進む様子がみられた。
紙立体を活用した思考のプロトタイピング
手を動かし高速に試行錯誤し、メンバー内で緩やかに合意形成が生まれる。
結果としてがようしマップを活用すると様々なリフレーミングが行われることがわかった。
リフレーミングは大別すると「意味のリフレーミング」「状況のリフレーミング」の2種類があると言われている。
がようしマップでは、オブジェクトを置くために机の上に敷く大きな画用紙を差し替えることで、「状況」をリフレーミングする効果につながった。
ものづくりにおける「がようしマップ」の活用事例
多様な専門性を持つ学生たちによる製品開発プロジェクトで「がようしマップ」を活用してみた。
事例1:開発し終わった製品を他に展開するためのアイデアを検討する
事例2:新規に製品のストーリーをデザインする
事例1)開発し終わった製品を他に展開するためのアイデアを検討する
一度検討されたアイデアを他に転用、応用できないか検討する際にも「がようしマップ」は活用できることがわかった。
事例2)新規に製品のストーリーをデザインする
新規に製品の企画検討を進め、コンセプトの妥当性や詳細な要件などを探るためのツールとして「がようしマップ」を活用できることがわかった。
モジュールツールについて
紙立体を活用したアイデア発想に要する時間は概ね20〜30分。
立体を制作するにはそれなりに時間もかかっていた。
こうした時間を短縮し、少しでもアイデアを議論する時間に充当できるよう、立体化にかかる時間や手間を少なくする工夫が必要になった。
また、株式会社マルマンからも「画用紙を用いたワークショップ」を広くビジネスシーンで広めていきたいという要望があった。
そこで、1)社内の業務や課題について議論するツールとして、2)画用紙の新しい使い方の可能性として、「絵を描く用紙(画用紙)から、ストーリーを描くモジュールの可能性を検討した。
絵が描けなくてもストーリーが描けるモジュールキットを検討している。
がようしとアイデアを変化させる切り口
また、モジュールキットと合わせて、カードの作成も試みている。
「がようしマップ」のワークショプを行う際に、モジュールキットを活用しながら、カードに記載された10個の切り口を参考にしながらストーリーデザインや議論を進めていくことができる。
がようしマップで見られたアイデアの特徴
紙立体を活用してストーリーをデザインするプロセスで見られた特徴がある。
オブジェクトを触りながらストーリーを整理していく過程で、1)概念を整理しながら作成している様子が見られた。
例えば、「疲れ」を解消する製品を検討している過程で、「疲れ」は「光、音、湿度」などのストレス要素にわけ、ひとつずつ解消することで、「疲れ」という概念が解消できる様子を説明していた。
その他にも、2)ものとものとの関係性「経緯や変化」を表すことに効果があること。3)ストーリーの前後を表現できること。4)不定形もすぐに表現でき可塑性に富んでいること。がわかった。
がようしマップの動画活用とリフレクション
がようしマップは大きなサイズになるため、保管が困難である。また、オブジェクトを動かしながら時間の変遷や変化を扱うため、完成したがようしマップを眺めただけではそれらが伝わらない。
こうしたことから、がようしマップを完成したら動画で撮影すると、シナリオとして活用することができる。
さらに、一度作成した動画を見直すことで、本来検討していたコンセプトの核からズレていたり、扱うべき機能などに無駄があることにきづけることがわかった。
リフレクションとしての機能も期待できそうである。
学生たちのアンケートを分析すると以下のような声が見出せた。
<がようしマップが内省として活用できそう>
・自分たちの頭の中を整理できる。
・チームで認識を共有することができる。
<可視化>
・会話だけでは共有しきれない情報を目に見えて理解できる。
・これまで想像としてあったものが、目に見える形としてある。
<プロセスを整理できる>
・必要な機能や、逆に不必要な部分に気づける。
・ターゲットユーザーに向けて機能を絞ることができる。
・製品の完成形が想像しやすかった。
・どうすれば聞き手が理解しやすくなるのかを意識できた。
今後の課題・検討したいこと
学会発表により多くのご意見をいただくことができました。
・(学生さんが)ものを作ることが目的になり、当初の解決すべき問題が不明確になりがちなので、がようしマップを活用してみたい。
・「どうやってモジュールの形状を決めたのか?」
→ストーリーを描く際に登場する頻度の高い「人」「建物」を作るパーツとして検討した。今後も必要な形状やサイズを検討していきたいと考えている。1つ特徴的なカード形状として「矢印」がある。これは登場するモノを表すパーツではなく、モノとモノをつなぐ役割を持つパーツである。矢印の他にもストーリーの構成に役立てるパーツがあるかもしれない。
・「色つきの紙は使わないのか?」
→白いほうがカスタマイズがしやすくて良さそうだ。ベースに色が付くことによって、別の情報やレイヤーも扱えそうなので今後検討してみたい。
・議論を共有するための手法としてとても良い。使ってみたい。
・(学生さんより)模造紙に書くと消せないので、ストーリーボードを書く際に模造紙を6回も書き直したことがある。その時間がとてももったいなかったのだが、がようしマップだと部分的に修正できたり、ブラッシュアップもできそうだと感じた。
・ストーリーボードを他者に説明する時、下級生など経験値の低い人に説明するにはかなり大変だ。分析的に見る目を持っていない人でも、ストーリーや特徴を伝えやすいと感じた。
・パッと見てわかるのがいい。
・動かしながら説明できるので、説明がしやすそう。
・ものを作りながらコミュニケーションできるので、ぜひ使ってみたい。
・全員で手を動かし触りながら話をすると、話が進めやすそう。(いつも議論の場がシーンとしてしまいがちなので)
・がようしマップを作成している時に、メンバー同士で「今のシーンはどう考えていた?」というのをメモできるカードがあるといいと思った。
・幼稚園など小さい子どもでも創発がしやすいかもしれないと感じた。
・がようしマップを見て、「プロトタイプ」はこんな簡単な形でもいいのだと改めて気づくきっかけになった。
・アイデアは試してみる、まずはものにすることが重要なので、とてもいい方法だと思う。
・成熟した市場に新しい価値をどのように発想したらいいかモヤモヤと考えていたが、がようしマップを使うと「モヤモヤ」したアイデアを瞬発的に出すことができそうだと感じた。(車メーカー)
・モジュールパーツを完成させるためには整理することが必要そうだ。ワークショップを分析して、レイヤー分析するとよさそうだ。
・アクティングアウトとがようしマップの違いはなんですか?
→客体と主体の違いがあると感じている。アクティングアウトは自分が動くことで体感として仕組みを理解することができる一方で客観的にながめることが難しい。
がようしマップはがようしを手で動かすので、客体として扱うことができ、客観的に俯瞰してみることができる。
関係性を可視化するような(ダイヤグラム)のようなものはがようしマップが向いている。自分ごと化してものがどう動くかを確認する際にはアクティングアウトが向いていそう。
・ゴールまでの時間の長さをどう解決するのか?
製品開発では長い時間を要することが多く、調整が難しいと感じているが、がようしマップではどのように解決することができるのか?
・ありものを活用するパワーを改めて見直すきっかけになった。紙コップから発想する時にすごく盛り上がった経験があるが、そのように、キューブのようなたった1つのオブジェクトでもこんないろいろな発想を促す足場になるのだと感じた。
・みんなでフラットにアイデアを出す時に良さそう。
・かきこめるところが良い。
今回の学会参加の発表内容といただいた意見をまとめた健忘録的な内容となりましたが...。
今後継続的にブラッシュアップを重ね、モジュールツールを形にしていきたいと考えています。
がようしマップを試してみたいとお考えの方へ
以下のリンクから「がようしマップ」で活用できる「カード」と「モジュールツールがダウンロードできます。
Gayoushicard.pdf - Google ドライブ
gayoushi_module_S.pdf - Google ドライブ
gayoushi_module_M.pdf - Google ドライブ
gayoushi_module_L.pdf - Google ドライブ
gayoushi_module_tri.pdf - Google ドライブ
gayoushi_module_rou.pdf - Google ドライブ
gayoushi_module_hexa.pdf - Google ドライブ
gayoushi_module_arrrow.pdf - Google ドライブ
共創-フラットな関係性の構築と製品開発
多学科学生による開発チームでIoTをテーマにしたアイデアソンを実施
3年前からスタートした共創プロジェクト。総合学園である強みを生かして複合学科で横断的な製品開発のプロジェクトを試みるものだ。今年は3回目のチャレンジで、学生たちも3期生を迎えた。年々学生たちと教員のスケジューリングが難しくなり、課外活動の運用が壁となっている。今年は思い切って2泊3日の宿泊合宿にてアイデアソンを行うことにした。
共創-開発企業、ユーザー、学生がフラットな関係でものづくり
このプロジェクトの良さはIoTをキーワードに製品アイデアを検討し、動くモックアップまで仕上げること。ファシリテーターは、電気応用工学、Webデザイン、CG映像、CG研究、グラフィックデザインの専門教員が務める。学びの環境や枠組み自体をプロトタイピングしながら、試行錯誤で取り組んでいる。
プロジェクトスタートから数えて3年目となる今年は、開発企業とユーザーである看護師さん、そして制作の主体である学生たちがフラットな関係でチームを結成し製品の完成を目指す。
多様な専門性を持つチームの共通言語は「デザイン思考」
今年の開発プロセスはデザイン思考をベースに、オリジナルツール「がようしマップ」を活用しながらストーリーデザインに取り組んだ。
以下、2泊3日のアイデアソンを時系列に記録する。
1 ユーザーに共感する・理解する
アイデアソンに先立ち、ユーザーインタビューを行った。今年は看護師の「休むこと」についての課題に取り組む。看護師さんにお越しいただき、前もって作成しておいた質問を投げかけながらお答えいただいた。看護師にとって「休むこと」は休息を意味し回復への質を下げる「不快な温度・におい・音・光」などを取り除き快適さを提供することに気遣っていることがわかった。私たちがイメージする「リフレッシュ」や「睡眠」といったダイレクトな発想でなく、専門的なアプローチと知識をお持ちであることがわかった。
2 問題を定義し・明瞭化する
インタビューの振り返り・共感マップ
インタビュー内容を振り返り、特徴的な言葉を抽出していく作業からアイデアソンがスタート。看護師が語っていた内容から言葉を抽出しポストイットに書き出した。その後、ポストイットを「看護師が言っていた発言(Say)」「やっていた行動(Do)」に分類しながら共感マップを作成した。「看護師が言っていた発言(Say)」からわれわれが想像した「ユーザーが考えていること(Think)」を、「やっていた行動(Do)」からわれわれが想像した「ユーザーの気持ち(Feek)」を書き足した。
完成した共感マップには、メンバーそれぞれが3つずつ特に注目したい観点を選び「赤いシール」を貼る。
ユーザー像を整理する ペルソナ・シナリオ
次にペルソナ・シナリオを作成し看護師さんへの共感を高める。
また、共感マップとペルソナ・シナリオから導いた「着眼点」を設定しユーザーの視点に気づくよう取り組んだ。
着眼点を整理。
↑Aチームの着眼点。
いくつか着眼点を検討する。その中からメンバーでもっとも共感できた着眼点に絞り込む。
↑Bチームの着眼点。
3 アイデアを開発・創造する HowMightWe...(HMW)
次に着眼点をふまえて「どうすれば課題を解決できるか?」という機会探索文を考えていく。HowMightWe...(HMW)の手法を活用し、着眼点に対して10個の視点から強制的に問いを考え、課題解決のための視点を探索する。
今回のアイデアソンのために制作したHMWカード。問いを作る10個の視点をカードにしてみた。
機会探索文がかけたら、メンバーで3つの案を選ぶ。選ぶ際のポイントは「有用性」と「新規性」。ユーザーにとって役にたつアイデアであるかと、新しいアイデアであること、話題になりそうかである。
そして、探索文から具体的なアイデアを検討していく。ブレインストーミングでは、短時間で高速に多くのアイデアを出すことに注力した。10分間のブレインストーミングを3回。1、2回目は自由なアイデアを出し、3回目は「制約ブレイントーミング」を行う。今回の制約は「同業者で話題になるか」「うらやましがられるか」である。
↑ブレインストーミング1回目
↑ブレインストーミング2回目
↑ブレインストーミング3回目
ブレインストーミングの整理(アイデアの抽出)コンセプトマップ
ここでまた、メンバーでアイデアの抽出を行う。
抽出の観点は「有用性」「実現性」「革新性」である。
ユーザーに喜んでもらえるか、形になりそうか、前代未聞であるかの観点で選んでいく。
それら得票数の多かったものを中心にコンセプトマップを作成する。
これらのコンセプトマップから導いたアイデアを最終的に選択する。
選択の観点は「実現性」「革新性」「有用性」の3つである。
コンセプト作成 エレベーターピッチ
さらに、「コンセプト」にまとめる。
まとめ方は「エレベーターピッチ」方式で完結に。
このコンセプトに基づいた製品アイデアがどのようなものであるか一目でみてわかるようにラフスケッチに描いた。
開発企業からユーザーベネフィットの視点からアドバイス
この段階でコンセプトを説明し、企業でIoT製品の開発に携わる方々にアドバイスをいただく。学生たちはここまで進めてきたアイデアをブラッシュアップさせる上で、ユーザーベネフィットの視点に気づくことによって客観的な視点をきっかけになった。
ユーザーの利用文脈を整理する ストーリーボード
さらに、ストーリーボードにまとめ、ユーザーの利用文脈について検討する。この段階ではなるべくシンプルに要点に止め、次のがようしマップで発展をさせていった。
チームで製品の構想を議論し共有する がようしマップ
まとめとして「がようしマップ」でユーザーの利用シーンや環境についてストーリーをデザインする。ここまでスケッチや文字といった抽象的な表現に止まっていた製品イメージを一気に具体化していく。
合わせて、チームメンバーがそれぞれに持っていた製品に対するイメージ(ブランド性、機能性、有効性、利用文脈)をすり合わせていく作業となった。
(がようしマップについての詳細は下記にリンクあり)
↑制作されたがようしマップ
↑がようしマップの時間はさながら図画工作。これまでの表情から一気に「笑顔」が溢れ会話が活発になる
↑がようしマップが完成するまでは20-30分かかるスローな作業。ただし、個人個人はかなり高速に思考を回転させメンバーの作業を横目で確認しつつ、全体の中で個人のイメージをすりあわせていく作業を行っていた。
がようしマップとモジュールキット
がようしマップでは、モジュールキットを使うことで、扱うデータの概念(包含関係やデータの大小など)を整理することができる。
↑モジュールキット。立体オブジェクトを作成する際に「人」や「たてもの」などを簡単に表したり、概念やイメージなど抽象的な「コト」を見立てて表現することができる。
↑モジュールを活用した代表的な表現の特徴。立体に表すことで「ストーリーの前後」を表すケースは多く見られた。人の表情の変化を画用紙の表と裏で表現するなど工夫が見られた。
がようしマップと指示カード
がようしマップとリフレクション
また、一度がようしマップを制作したら動画に撮影して、ユーザーシナリオを確認する。客観的に動画をチェックすると、シナリオがユーザーにとってのメリットや価値を伝えておらず、開発者側のこだわりや機能に偏っていることに気づく場合がある。
ユーザー視点でこれから提供する製品が、どのような価値があるのかシナリオをもう一度整理し直して、再度動画を撮影するとコンセプトが整理される。
4 プロトタイプ
簡易なプロトタイプを制作する。この段階ではなるべく「早く」「安く」「雑に」作ることが良しとされる。身の回りにある素材で手早く制作しよう。
デザインアイデアを確実に伝える手段としてのラピッドプロトタイピング | アドビUX道場 #UXDojo – Adobe Creative Station
↑プロトタイプを紙で作る担当学生、そこでやり取りされるデータのフロー図を検討する学生など、この段階から技術的な視点を意識して検討された。
5 テスト
2泊3日のアイデアソンも終盤。ここまで進めてきた製品についてテストを行いました。2チームがそれぞれ相互にユーザー役をつとめ、ユーザーの利用シーンを演じます。開発チームはそれを観察して自分たちの構想にブレや矛盾がないかを客観的に判断した。
↑ユーザーテストの様子。
↑開発チームはユーザーの演じている様子を観察しメモをとっていた。
番外編 各種技術に関する講話
今回のアイデアソンではワークショップの合間に最新技術動向を紹介する講話も行った。サポート役に入っている教員たちがCG,CG映像、IoT業界から技術や話題を持ち寄り講話と実演をした。
↑VR技術を体験する学生
↑ラズベリーパイやセンサーの紹介
↑ラズベリーパイやセンサーの紹介
開発企業と共同したアイデアソン
2泊3日のアイデアソンには開発企業5名も参加した。今回はこのアイデアソンで検討している製品を実際に商品化することがゴールになっている。
開発主体は学生たちだが、製品化までのプロセスを共に体験することで、早い段階でユーザーベネフィットや技術視点でのアドバイスをフィードバックすることができた。
上流工程を共同で行ったことで、開発企業と学生がチーム一丸となってコンセプトを共有することができた。今後製品を実際に制作していく過程では、製品構想が変更されることも出てくると思われるが、いつでも立ち戻れる立脚点を持てたことが財産になったのではなかと思われる。